あなたは怖い話は好きですか?
老若男女、一度は聞いたり話たりなど、怪談に触れる機会はあるのではないでしょうか。
そんな怪談の中でも「病院」は舞台としてはメジャーと言えるでしょう。
今回紹介する病院の怪談は「カルテ」です。
夜中に読むのはおすすめしません。何故なら、眠れなくなっても責任は取れませんから…
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
他の怪談も気になるという方は、下記の記事を参照ください。
【病院の怪談】「カルテ」

これは、僕がバイクの事故で右足を折って入院した先の病院で起こった話になります。
僕が住んでいるところは、一言で言えば「田舎」。入院した病院もそこまで大きくはありませんでした。
リハビリも混みで1ヶ月の入院が必要らしく、僕は病室で「どうやって暇を潰そうか」と考えていました。
友達も仕事で忙しいし…
そう思っていると、一人の看護師さんが近づいてきます。
「初めまして、これから1ヶ月担当になる川島と言います」
担当の看護師さんが付いてくれるらしく、年も僕と近いことが容姿から窺えました。
僕「よろしくお願いします」
川島「一つだけ注意事項があって…」
川島さんが言いづらそうに俯きながら話し出しました。
川島「夜の0時にはこの階の男子トイレは使わないでくださいね」
理由を聞くと「水が出なくなる」だとか「人手が少なく付き添えない」だとか濁されているような感じがしました。
挨拶も早々に川島さんは他の業務に戻っていきます。
僕は直感で勘ぐりました。
「何かある」と。
ですが今は身動きも取れず足の治療に専念するしかありませんでした。
もちろんトイレも行くことができず、オムツか尿器かという苦渋の決断を迫られたりもしました。
担当の川島さんに尿器を持ってきてもらうときはなんとも言えない小っ恥ずかしさがあります…
退院日が近づいてきました。ベットでの生活が車椅子を経て松葉杖まで進歩しました。
リハビリ目的で院内の歩行も許されています。
退院後も、リハビリのため通院は免れませんが、それでも自分の足で歩けることに喜びを感じていました。
さて、やり残したことがあります。
それは、川島さんから聞いた注意事項、「夜の0時にはこの階の男子トイレは使わないでくださいね」を反故にすることです。
献身的に尽くしてくれた川島さんには悪いですが、好奇心が燻られて仕方ありませんでした。
入院中、反故にしたことがバレると後が過ごしにくいと考えて、退院日の前日まで引っ張ったのです。
これで心置きなく反故にできます。
滞りなく決行するために、入念に偵察を行っていました。松葉杖になってからは、夜中であっても「眠れない」と言いながら院内を散歩していました。
例の0時付近は、休憩なのか入れ替わりなのかナースステーションに誰もいない時間帯であることは偵察済みです。
僕は満を辞して松葉杖を手に取りました。
意気揚々と男子トイレに向かいます。
事前に偵察していた通り、ナースステーションには誰もいませんでした。
ナースステーションを横目に、なんとも言えない恍惚感を抱きます。
まるで、ズル休みで遊びに出かけている時のように…
男子トイレが見えてきました。
注意事項では、男子トイレを使うなということでしたが、実際に何をしてはいけないのかまでは聞くことができませんでした。
とりあえず中に入ってみます。特に変わった様子はありません。
小便器で用を足してみますが、普通に水は流れます。
少し拍子抜けましたが、手に持っていたスマホの時間を確認すると「23:58」まだ0時ではありませんでした。
とりあえず、トイレの怪談の定番である、奥の個室に入ることにしました。鍵を閉めて様子を見ます。
便器の蓋を閉め、腰を落ち着かせて一息ついていると、スマホが「0時」を告げました。
「なんだ、何も起きないのか」
と落胆しかけましたが、何か物音が聞こえてくることに気づきました。
ギィィィイ…ギィィィイ…ギィィィイ…
一定間隔で鳴る物音です。最初は何の音なのか気付くことはできませんでしたが、徐々に近づいてくるこの音に集中していると思い出すことができました。
それは、自分も鳴らしたことがある音でした。
車椅子が進んだ時にタイヤが軋む音でした。
油を刺していないのか、フレームが歪んでいるのか、車椅子もサビが目立つため手で漕ぐたびにさっきみたいな不快な音が出ていました。
「誰かがこのトイレに向かっている?」
気づいた時には、トイレ内にまで音が響いていました。
個室に入ったはいいが、出て顔を合わすのも億劫に感じられたため、個室でやり過ごすという選択肢を取りました。
その音は徐々に近づいてくるのがわかりました。
ギィィィイ…ギィィィイ…ギィィィイ…
「早く終わって戻ってくれないかな」そう思っていましたが、どうやらこの不快な音を出す車椅子、僕が入っている個室の前で止まったんです。
「?」
何事かと思ったその時、
ギィィィイ…バタンッ
車椅子が倒れる音が聞こえました。
僕は急いで便器を踏み台に隣の個室へ移動しようとしました。
それは、「車椅子が倒れて扉が開かないから、隣から出て助けよう」としたのではありません。
あくまで直感です。そう感じたのです。
車椅子が倒れたのは、バランスを崩したのではなく、乗っていた人が急に立ち上がり倒れたのだと。
そして、立ち上がった人は、トイレの扉に手をかけよじ登ろうとしているのだと感じました。
何も根拠はなく、物音以外に想像に足る材料はないのですが、直感がそう叫んだのです。
急いで隣の個室から逃げないと…
ですが、あまりの恐怖から全身の毛穴から冷や汗が流れ出ていて、手汗によりうまく登ることができません。また、手足が震えているためもあるでしょうが、右足も言うことを聞きませんでした。
あまりの絶望的な状況から涙が止まりませんでした。
「どうなるんだろう…」
流暢にそんなことを考えていました…
何も起こりませんでした。
物音から数分経過しましたが、何も起こりません。
「もしかしたらどこかに行ってくれたのかも」
そう思いましたが、確信が持てない以上、下手に動くことはできませんでした。
僕は、扉の下の隙間から外を覗くことを思いつきました。
車椅子が倒れていたり、誰かがいれば下から様子を覗くことができるのでは…
そう思い腰を屈めて扉の隙間を覗いてみます。
そこで見たものは…
同じように見返してくる2つの赤い目玉でした。
気づいた時には病室のベットの上にいました。
どうやら気を失ってしまったようです。
すれ違う看護師さんは特に昨晩のことで触れてくる様子もなかったため、もしかしたら夢だったのかもしれません。
退院当日、病室を出る時、ナースステーションに足を運びました。
最後の挨拶のために目に止まった看護師さんを呼び止めます。
僕「川島さんに挨拶したいのですが、呼んでもらってもいいですか?」
と聞きました。看護師さんは首を傾げてこう言います。
「川島さん?そんな名前の看護師はいませんよ」
そんなはずはないと言い返します。この1ヶ月、担当として付いてくれていたことを伝えるも、返ってくる答えは一緒でした。
あまりにも僕が折れないためか、看護師さんは僕のカルテを持ってきてくれました。
カルテを確認すれば、僕の状態が記載されていて、記載をするときにその担当の看護師の名前が書いてあるのだと説明を受けました。
その看護師さんと一緒にカルテを開いて確認してみます。
僕の担当の看護師の欄を…
「川島」
どの記載にも「川島」と名前が入っていました。
それを見た看護師さんの青ざめた表情から、本当に川島という看護師が在籍していないことが想像できました。
僕はそのまま病院をあとにしました…
今では川島さんの顔は思い出せません。
何故僕に0時に男子トイレを使うなと言ったのか、あの車椅子の人と川島さんの関係性はどうあるのか…と考えてしまうことがありますが、今となっては真相を知ることはできません。
まとめ

実際に尿器を持ってきてもらうなど、川島さんに看護してもらっていた
カルテのどの欄にも川島と記載があるということは、他の看護師は関与していなかった
何故0時にトイレを使用するなと言ったのは、僕を守るためなのかもしれない
以上で、【病院の怪談】「カルテ」を紹介します※眠れなくても責任取れませんを終わります。
他にも、【病院の怪談】「厳選4選‼︎」を紹介※眠れなくても責任取れませんという記事もあるので、興味がある方は是非ご一読ください。
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