あなたは怖い話は好きですか?
老若男女、一度は見たり聞いたりなど、怖い話に触れる機会はあるのではないでしょうか。
そんな中でも「電車の怖い話」は舞台としてはメジャーと言えるでしょう。
今回紹介する電車の怖い話は「パーソナルスペース」です。
夜中に読むのはおすすめしません。
何故なら、眠れなくても責任は取れませんから…
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
他の怖い話も気になるという方は、下記の記事を参照ください。

【怖い話】電車の怖い話「パーソナルスペース」

「パーソナルスペース」なんて言葉があったりする。
人は、一定の距離内に他者が入ると不快に感じるスペースのことだ。
それは、親しい間柄にも存在する。
ならば、こと、初めましての人に対しては如実に発揮されることだろう。
だからこそ、相手との親交度を見極め、適切に距離を測る必要がある。
何事も、距離感ってのは大事ってことだ。
間違っても、無理に詰めるべきじゃない。
それなのに、たまにいるんだ。
そんなものは最初から無かったかのように。
相手の気持ちを慮らず、無理に近づいてくる、距離感の暴力を振るう輩が。
自分と相手が認識して初めて保たれるこのスペースを、土足で踏み躙るそんな無礼者。
今回の件は、その最たる例と言えるだろう。
俺は疲れた身体を左右に揺らしながらいつもの電車に乗り込んだ。
最後尾の車両、乗り込んで進行方向側の最前列、右端の座席が俺の指定席だ。
座席に背を付けつつ、頭を右の壁にもたれかける。
この姿勢がなんとも心地よく、仕事の疲れが溶けていくような、そんな感覚に襲われる。
睡魔の足音が聞こえてくるようだ。
車内は乗客で溢れている、とまでは行かないが、座席はまばらに空いており、扉の前の手すりに寄りかかりつつ、うとうとしている乗客がいる程度には席が無い。
眠たい目を擦る。鈍い頭には一つの場面が思い浮かんでいた。
職場の後輩が話しかけてきたことだ。
「ここがわからない」「どうしたらいい」「やり方を教えて欲しい」
と三度以上教えているにも関わらず、何度もしつこく聞いてくる。
口頭での説明でも事足りるはずなのに、わざわざ俺のデスクのパソコンで教わろうと肩を重ねてきた時は内心ギョッとしていた。
家族だろうが、親友だろうが、恋人だろうが…
適切な距離感ってものがあるだろう。
それが、あまり親しくない、寧ろ嫌っている後輩ならば尚更だ。
知らないのか、パーソナルスペース。
「俺の敷地を、縄張りを、領域に、踏み入った時だけ鳴る警笛のような物があればいいのに」とここまで強く思ったことはなかった。
少し肘で小突いてみるが、気づいていないあたり神経が図太すぎる。
結局その場は諦めてこちらが折れたんだけど…
こいつらは不快じゃないのか…?
バスや電車なんかは、場合によっては見知らぬ人と密集してしまうだろう。それこそ肩が擦り合うくらいに。
それを、理解して、認識して、飲み込んだ上で利用しているのだろう。
言わば、消えるんだ。
絶対領域とも言える、パーソナルスペースが、公共機関の前では忽然と。
後輩と乗客の姿を重ねながら、重たい瞼を持ち上げ、辺りを見渡してみた。
どいつもこいつも浮かない顔で電車に揺られている。
スマホばかり見ている中毒者。
船を漕ぐように揺れながら隣席の乗客に寄り添うおじさん。
それを怪訝そうに眺めながらもアクションを起こさない女の人。
いつも通り、写り映えのしない映像が視界に入り込んでいた。
あぁ、まぁそうだよな。
流石に知らないおじさんに寄りかかられたら嫌だよな…
あったんだ…パーソナル…スペース…
少しずつ意識は遠くなり、頭が筋力では支えられなくなってきた。
何度か垂れ下がった頭を持ち直した時、
写り映えのしない映像の中に、一際異彩を放っている人影が見えた。
俺とは反対の、進行方向とは真逆の最後列、対比するように左側の座席にそれはいた。
黒く長い髪が柳のように垂れ下がっていて、遠目では顔は確認できないが、白く長いワンピースのような服を着ていることから女の人であろうと推測はできる。
仮装とか、コスプレとか、いろんな人が電車に乗っているのを見たことはあるが、あそこまで露骨に「気持ち悪い」と感じたのは初めてだった。
まぁ、それも一瞬だけなんだけど。
睡魔が牙を向く。
加速度的に重くなってきた瞼が、視界を覆った。
どれくらい経ったかわからないが、電車の揺れに、跳ねた頭が壁を打つ。
衝撃で目を覚ました。
「寝過ごしてしまった」
直感でそう感じた。
焦る心を抑えつつ、出入り口に設置してある電光掲示板に目を向ける。
…良かった。まだ最寄駅には到着していないようだ。
安心して身体を定位置にはめる。
深いため息と共に、また目を瞑ろうとした時、違和感に気づく。
乗客も少なくなってきた車両内で、それは近づいていた。
反対方向の最後列にいたそれは、何故か車両の中央付近に座っている。
遠目ではわかりにくかった柳のような髪は、決して真っ直ぐ垂れ下がっているわけではなく、ちぢれて傷んでいるのが見てわかる。
手や足は無造作に投げ出されており、電車の揺れのせいか、痙攣のようにピクついているように見えた。
一瞬、ゾッとしたが、大したことではないとタカを括る。
俺もよくある。
寝過ごしたと勘違いして、停車駅で外に出たものの、勘違いだと気づいて車内に戻ろうとするが、同じ出入り口だと気まずいから、同じ車両の違う出入り口から入って、違う席に座る…
よくあることだ。
なんて考えていたりした。
多分、眠くて頭が回らなかったんだろう。
本当にその通りなんだとしたら…結末は違っていただろうに。
壁が側頭部を叩いた。
電車の揺れは、時々驚くほど強烈に襲ってくる。
ハッと重い頭を上げる。
上体を起こし、背筋を伸ばす。
電光掲示板に目を向ける。
まだ最寄駅に到着していないようだ。
安心して腰を曲げ、壁にもたれようとした時、一瞬にして身体は硬直した。
目の前に、いた。
それは、垂れ下がった前髪から顔は見えないが、確実にこちらを見ているだろうことはわかった。
それほどまでに、冷たい視線を感じたから。
そして、気づかなかったが、異様に手足が長い。
肩から肘までが、肘から指先までが…足も同じように…長かった。
それが…時折ピク…ピクっと波打つように動く。
ここにいたらまずい。
それだけは混乱している脳みそでも理解できた。
電車の速度が緩まる。
アナウンスから、最寄り駅が近いことがわかった。
固唾を飲む。女からは目が離せない。
電車の速度は徐々に落ち、停車と同時に車内は揺れる。
女は大きく左右に揺れた後、少しずつ手足を折りたたみ、上体を前に起こしているのがわかった。
立ちあがろうとしているのか…
電車の扉が開く。
俺はすぐに座席から立ち上がり、扉に向かって走り出そうとした。
その時、気づく。
乗客が…誰もいない、と。
そして、後悔する。
立ち止まってしまった、と。
女から…目を離してしまっていたから。
ゆっくりと顔を女の方に向ける。
女は…いなかった。
無意識に止めていた呼吸を思い出し、再開する。
さながらマラソン後のような呼吸の乱れを正しつつ、内心ではホッとしていた。
一旦電車を出ようかと扉側を向き直す。
左頬に、微かに触れた。
葉っぱのような軽くも、気持ち悪い触感にまた息が止まった。
恐る恐る左頬を確認する。
黒くも長い、ちぢれている長い紐が束になって垂れ下がっているのが見えた。
視界を…上に向けると…

意識が戻ったのは、進行方向最前列の右側の座席で、側頭部を壁に掛けられている広告の角で殴打した時だった。
最初は何が起こったのかわからなかったが、最寄駅についていないことを冷静に確認し、再度うとうとし始めた時、左頬に微かに残っている感覚に気づいた。
抑えきれない感情に、立ち上がり辺りを見渡す。
周りの乗客が冷たい目でこちらを見ているのはわかってはいたが、関係なかった。
女の姿は…どこにもなかった。
そのまま座り、冷たい視線が逆に安心材料となる。
さっきまでのことは、夢だったのか…それとも…
どちらにしても、距離感は守ってほしいものだ。
まとめ

満員電車を利用している場合、互いに理解してパーソナルを侵害し合っていることになる
だが、自身の人間関係に当て嵌めると、どんな理由があっても肩が触れる距離まで近づけることはないだろう
つまり、それが許されるのは、赤の他人に限る、ということなのだろうか
以上で、【怖い話】電車の怖い話「パーソナルスペース」を紹介※眠れなくても責任取れませんを終わります。

コメント