あなたは怖い話は好きですか?
老若男女、一度は見たり聞いたりなど、怖い話に触れる機会はあるのではないでしょうか。
そんな中でも「夢の怖い話」は舞台としてはメジャーと言えるでしょう。
今回紹介する夢の怖い話は「夢なんだから」です。
夜中に読むのはおすすめしません。
何故なら、眠れなくなっても責任は取れませんから•••
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
他の怖い話も気になるという方は、下記の記事を参照ください。
【怖い話】夢の怖い話「夢なんだから」

何回目だろう。
刺されるのは。
息絶えるのは。
動かなくなるのは。
何回目だろう。
肌を突き抜ける感触。
臓物を破る感触。
身体から噴き出る血の感触。
何回繰り返したかわからない。
何回繰り返すのかもわからない。
そして今日も繰り返される。
それでも何事も無かったかのように明日を迎える。
そりゃそうだ。
だって夢なんだから。
僕の一日はお母さんに刺されて始まる。
いや•••終わるというべきなのかな。
寝始めを基準にするのか、目覚めを基準にするのか•••
やっぱり、始まりが正解かな。
刺されて目が覚めるわけだし。
どちらにしても、あまり良い目覚めじゃない、ってことには違いがない。
いい加減勘弁してほしい。
夢であったとしても、刺されるのはごめんだ。
毎回同じシチュエーションだ。
僕が部屋で勉強しているとお母さんが入ってくる。
最初は「勉強はどう?」って優しく聞いてくれる。
でも、僕がどう返答しても決まってこう言うんだ。
「成績に反映されてないじゃない!!!」
優しかった言い方や、顔は豹変する。
「この間のテストは何!?」
言い返す余地なんてありゃしない。
「寝る暇なんてあるの!?」
隣の家まで聞こえてるんじゃないかと思うくらいに声は大きく、語調は荒い。
「どれだけの学費が•••」
お金の話をされると言いたいことも言えなくなる。
「あなたのために言ってるのがわからないの!?」
最後にはこの捨て台詞を僕にぶつける。
そしてどこから出したかわからないけど、いつの間にか右手で持っている包丁を僕のお腹に突き立てる。
トマトに刃を入れた時のように、肌の張りを感じつつも、一旦その緊張を破ってしまえば脆いものだった。
包丁を避けるかのように肌は分かれ、肉を開き、悠々と体内に異物が侵入してくる。
途中にある臓物は無抵抗に貫かれるばかり。
体内に貯留されていた血液は、逃げ場を求めるように開口部から溢れ出す。
僕は膝から崩れ落ちる。まるで足が無くなってしまったかのように。
そして視界に映るお母さんは、僕を一瞥して部屋を出る。
慌てていたり後悔しているような様子はない。
平常で通常で日常かのように、僕を刺して部屋を出る。
僕は流れ出る血が温かく、冷めていくのを感じながら、夢から覚める。
夢であったことにほっとして、やるせない気分のまま一日を迎える。
ベットから起きて、部屋を出る。
リビングに行くと、お母さんが朝食の準備をしている。
もちろん、夢での出来事なんて知る由もないので話題にも出てこない。
僕も話す気にはなれないしね。
現実でのお母さんは僕に包丁を突き立てるなんてことはしない。
けど、言葉は別だ。
僕の胸には無数に刺さっている。ソゲのように抜けにくい、小さい物が何個も何個も。
お母さんは意図してるかどうかはわかないけど、刺される度に自分を否定されている気分になる。
「ちゃんと勉強してる?」
いつも確認してくる。どう話ても理解しないくせに。
「〇〇君はね•••」
他の人を引っ張り出して比べるのはやめてほしい。僕は○○君じゃない。
「お母さんの若い頃は•••」
いつの話だよ。それに、僕はお母さんでもないよ•••。
「あなたのために言ってるのよ!?」
•••重たい。
一番重く、辛い言葉だ。
この言葉を聞く度に心に傷が増えていく。
僕のためって言うけど、僕の何のためなの?
将来?未来?選択肢?
僕には想像できない。
それは、今、これだけ苦しい想いをして•••
心は傷だらけで•••
毎晩夢にうなされて•••
•••お母さんを嫌いになってまで大事にしないといけないことなの?
僕にはわからない。
だけど、それを伝える言葉も、伝えようとする想いも、すでに持ち合わせてはいなかった。
黙ってご飯を食べ、時々頷いている水飲み鳥と化しているだけだった。
一緒に食卓を囲んでいるはずのお父さんは、特に興味がないようで新聞を読んでいるだけだ。
なんでだろう。
夢でもないのに。
•••口の中で血の味がする。
無慈悲な食事を終えて、学校に向かう。
学校が終われば塾へ。
遊ぶ暇なんてない。
そんな僕に友達なんてできる訳もなかった。
最初は話しかけてくれた人もいた。
だけど•••
勉強ばかりしているから流行り物もわからない。
ゲームや漫画、テレビなんて許されるはずもなく、話に付いていけなかった。
放課後友達と遊ぶ、なんて夢のまた夢だ。
気づけば、みんなの輪の中に僕はいなかった。
どこに居ても疎外感で埋め固められている。
それでも机に向かうしかなかった。
そして今日もお母さんに刺されて目が覚める。
学校•••塾•••勉強•••刺される。
学校•••塾•••勉強•••刺される。
学校•••塾•••勉強•••刺される。
大事な何かが消えている気がする。
目に写る景色が色褪せて見えた。
自分が自分じゃないような感覚に陥る。
何かを聞かれても、自分じゃない他の誰かが答えている•••
自分を遠いところから自分で操っているような妙な感覚。
•••いつの間にか口の中の血の味も消えていた。
そして今日もお母さんに刺されて目が覚める。
毎日の繰り返し。
辛いなんて感情も消えていた。
だから、別に抜け出したい、とか逃げ出したいとか思った訳じゃない。
深く考えた訳じゃない。思い悩んでもいやしない。
ただ単純に、そうしようと思っただけなんだ。
いつもみたいに、僕が勉強しているとお母さんが部屋に入ってきた。
優しい顔で聞いてくる。
「勉強はどう?」
僕は用意していた包丁を取り出す。
実際の感触は夢と相違はなかった。
刃が当たった瞬間に少し抵抗は感じる程度だった。
手に、顔に生暖かい物が付着する。
色褪せた視界に赤色が彩られる。
•••血の味がする。
消えていた物がゆっくりと戻ってくる。
付着した物が冷えてくる頃、お母さんは膝から崩れ落ちていた。
僕がそうであったように。
その姿を見て、僕と一緒だ、と少し嬉しくも思えた。
僕はお母さんを一瞥し、机に戻る。
物音を聞いて廊下を走る音が聞こえる。
お父さんがお母さんに声をかけていた。
何があった•••とか、救急車を•••とか騒いでいた。
僕に向かって、「何をしているんだ!!」と怒鳴ったりもしている。
僕はお父さんに言う。
うるさいな。どうでもいいでしょ。
だって、夢なんだから。
僕は机に向かってペンを取った。
まとめ

刺される夢は、問題解決や新たな段階への移行とする、吉夢として解釈するケースも多い
感覚や感情が消えた場合、夢と現実を明確に区別することはできるのだろうか
夢とわかっていたとしても、もしものことを考えると、あまり大下座なことはするべきではないか
以上で【怖い話】夢の怖い話「夢なんだから」を紹介※眠れなくても責任取れませんを終わります。
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