あなたは怖い話は好きですか?
老若男女、一度は見たり聞いたりなど、怪談に触れる機会はあるのではないでしょうか。
そんな中でも「SNSの怖い話」は舞台としてメジャーと言えるでしょう。
今回紹介するSNSの怖い話は「釣り」です。
夜中に読むのはおすすめしません。何故なら、眠れなくなっても責任は取れませんから•••
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
他の怪談も気になるという方は、下記の記事を参照ください。
【SNSの怖い話】「釣り」

俺は釣り師だ。
「釣り」と言っても魚を釣るわけじゃない。
ネットに住まう有象無象どもを釣り上げるわけだ。
釣った後はどうするのかって?
食べるわけじゃない。どいつもこいつも図鑑に載っていないような魑魅魍魎ばかりだろう。どんな毒が含まれているか知れたものじゃない。腹を壊しても堪らないしな。
リリースもしない。それじゃ面白みもない。触りたくも無い。
んじゃどうするのか?
答えは簡単。
見て愉しむのさ。
と言っても、水槽を用意して良い環境で飼育し観察する•••そんな手間な事はしない。
釣り針に食いついた有象無象を、釣り針も外さずに地面でピチピチしてるのを見て愉しむ。
これが何とも言えない愉悦を感じるのさ。
もちろんそのままだといずれ針は外れて逃げてしまうか、息絶えてしまうだろう。
だから、適度に餌は口に放り込んでいる。
有象無象に気づかれないように、釣り針が心地よく感じる程に適度に餌を与える。
この塩梅がなかなか難しい。
釣りだと気づいて逃げ出す者もいる。
釣りだと気づいて針を引きちぎろうとする者もいる。
それでも構わない。
何故なら、釣りだと気づかずに食いついて離さない者もいるのだから。
俺はただ釣り糸を垂らし、食い付いた者が逃げないように餌を与えて悶える様を愉悦に浸り楽しむ。
これほど愉快な遊びはあるか?いやないね。
恨みは買わないのかって?買ってもいいのさ。いざとなれば釣り針を竿ごと捨てればいいのだから。
どんだけ釣っても近寄らなきゃ怖くないでしょ。
スマフォ一つあれば釣りをすることができる。みんなも持ってるだろう?
釣竿やリール、ルアーなんかも必要ないんだ。
現代人でスマフォを持っていない人の方が圧倒的に少ない。
生活の一部として便利性の高いスマフォで、釣りを愉しめる•••ゲームのアプリと一緒さ。
釣りの場は、堤防や船の上じゃない。SNSに糸を垂らすんだ。
どんなSNSでもいいが、画像が貼れる方が断然釣りが捗る。
活字では有象無象は釣れない。
釣り場を選択すれば、あとは適当に人物像を設定して、適当に可愛い女の子の画像を貼れば釣りを簡単に始められる。
可愛い女の子の画像はどうするのかって?
んなもんAIに作らせればいいんだよ。
多量粗が見えたとしても、気付きゃしないんだから。
下心丸出しの有象無象は画像の解像度は気にする事はあっても、煩悩に塗れた目ん玉で本物を見分ける理解度は皆無に等しい。
多少髪が不自然に流れても、指の本数が多くても、顔のバランスが異次元でも•••
可愛く見えたらそれでいいんだ。
あとは人物像を設定する。
ポイントは三つ。
若い、活発、頑張り屋
これで入れ食い状態さ。
今は「一人暮らしの大学生、バイトと学業に大忙し」という設定で釣りをしている。
最初は少数のフォロワーしかいなかったが、日が経つことに大量のフォロワーが増えていった。
数千を超えた辺りから一件投稿すれば、一日中通知が鳴り止まなくなる。
有象無象が有象無象を呼び込んでくる•••
律儀に行っていた餌やり•••もといコメント返しも最近は必要が無くなったのでやめている。
中には古参と称してメッセージを送ってくるような奴もいるが、相手にするとつけ上がるので無視している。
ここまでくると釣り針が抜ける心配もないので既読すら付けない。
コメントについては「AIだ」とか「ステマだ」とか送ってくる輩もいるが、そんなものは有象無象のコメントで流れていくので何の問題もなかった。
自分で針を喉元まで深く刺してくれるのだから世話がない。
まあそれも含めて愉しいんだが。
一番食いついてくる投稿は、自撮りだ。風景の写真や、食べた物、使用物などの写真も良くコメントがつく。
人気の喫茶店や景色が綺麗に見える場所なんかで写真を撮る。一緒にぬいぐるみなんかを置くとウケがいい。
あまり出歩かないから写真のストックがなく、軽い気持ちで挙げた部屋からの景色を映した写真もコメントが多かった。
そんなに若い子の私生活が気になるのだろうか。
実際住んでいるのはおっさんなんだが。
だが、この愉しみ方にもリスクがある。それは身バレのリスクだ。
この間うっかり宅配で頼んだ品物を挙げた時に、映り込んだ段ボールに住所が記載してあった。
すぐに気づいて削除したが、あの時は肝を冷やした。
あれ以降は特に音沙汰がない。投稿したてで誰も見てなかったのだろう。
今後は注意しなければと流石に反省した。
最近もめげずに投稿を続けている。順調にフォロワーは伸びてはいるが•••
代わり映えしない感は否めない。
何かいいネタはないか•••と考えていた時、ふと思いつく。
風邪でも引くか•••
こんなことを思ったのは生まれて初めてだった。
風邪でも引けばいいのに•••
とは何かをサボる口実に思いついた事はあるが、確定で風邪を引く未来を予定するのは全人類で初めてじゃないだろうか。
思い立ったら吉日。
すぐに引き出しの奥に眠っていた体温計を取り出す。
実際に脇に入れただけでは熱は出ないだろう。
早速熱めの風呂を入れ入浴。それから体温を測定する。釣るための努力は惜しまない。
願いも叶って体温計は「39.0℃」を記録してくれた。
早速SNSに投稿する。
添える文章は•••そうだな。
「インフルエンザに罹って辛くて食事も買いに行けない」
こんな感じでいいだろう。
投稿と同時に多数のいいねやコメントが寄せられる。
気分がいい。
コメントの内容は、「大丈夫?」と心配しているものから、「買っていこうか?」と下心が感じられるものまで多数だ。
ネット上で釣り針に食いつき、釣りとも知らずにピチピチと跳ね回っている•••
この瞬間がとてつもなく悦だ。
しばらく鳴り止まないスマフォを片手に悦に浸っていた。ただ寝そべっていただけだが、人間何もしなくても腹は減る。
ご飯が食べたい。インフルエンザには罹ってはいるが、辛くもないので買いに行くことにした。
わざわざコンビニに行くためだけに着替えるのは億劫なので、部屋着のまま出かけることにする。
重たい腰を上げ立ち上がる。何を食べようかと考えながら玄関に向かっていると•••
ピンポーン
何だ?宅配か?頼んだ覚えはないが•••
恐る恐る扉の覗き穴を確認する。
そこには見たこともないおっさんが突っ立っていた。
ただ知らないおっさんが立っている、それだけならよかった。
その光景に俺は恐怖を感じた。
いや、この時点ですでに確定してはいない未来が頭をよぎり後悔をしていた。
何故なら、おっさんは一瞬見ただけでわかる程に異常だったからだ。
息は上がっており、目は見開きガンギマリ状態。忙しなく左右に揺れながら扉を凝視している。左手には宅配の荷物とも思えない大きめのビニール袋を握っている。
ピンポーン
おっさんは再度インターホンを鳴らした。
扉を舐めるように見回しながら扉越しでも聞こえるくらいの大きな吐息が聞こえてくる。
おっさんの息が、ボルテージが徐々に上がっているのがわかった。
ピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンポーン
おっさんは待ちきれずにインターホンを連打した。
俺は想像もしていなかった現状に体がすくんでしまっていた。
胸の奥が重い。心の位置が胸というのも納得ができる。
何故こうなった•••
俺は考えるまでもなくその答えを導き出していた。
その答えが違うことを切に願いながら覗き穴を凝視する。
早く帰ってくれ•••だが願いは届かず、答え合わせもすぐに行うことができた。
ドンドン
おっさんは扉を叩いた。
そして続けてこう言った。
◯◯ちゃん!?僕だよ!!◯◯だよ!!
おっさんが放った言葉には聞き覚えがあった。
それは、俺が釣るために使用していたアカウントの名前と、古参と名乗る有象無象の一人の名前だった。
特定された•••
目の前の異常なおっさんが今までの投稿を頼りに家を特定したのだと瞬時に理解できた。
嘘だろ•••気づけよ•••釣りだって•••
そんな言葉がおっさんに通じないのは一目瞭然。
ネットなんだからしつこいのはネットの中だけにしてくれよ•••なんて意味のわからないことが頭をよぎる。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
今にも扉を蹴破ってきそうなおっさんに「もうだめか•••」と頭を抱えしゃがみ込む。
こんなことしなければよかった•••
後悔の時間が続く。いっそスマフォなんて叩き割ろうかと自暴自棄になったりもしたが、もはや意味がない。
どんなことをしても目の前の状況は変わりようがないのだから•••
と覚悟を決めていたが、おっさんからのアクションはいつの間にか無くなっていた。
あまりに反応がない扉に飽きたのか帰ったようだ。
恐る恐る扉の覗き穴を確認する。
そこにはおっさんの姿はなかった。
初めて感じた心の位置を確認しつつ、胸を撫で下ろす。
おっさんほどではないが、俺も息が上がっていた。
立ち上がるまでに多少の時間がかかった。
俺は一息つき扉に手をかける。
何を食べたかったのか、その答えが出ていなかったことを思い出しはしたが、考えるのもめんどくさくなっていた。
とりあえず外に出てから考えるか•••
俺は扉を開け玄関から一歩を踏み出した。
◯◯ちゃん!?良かった無事で•••
俺は声がした方を振り向く。
そこには嫌というほど目に焼き付いてしまったおっさんの姿があった。
おっさんの表情が少しずつ強張っていくのがわかった。
それはそうだ。女の子と思っていたのが男だったのだから。
この状況を見ておっさんは何を考えるのだろう•••
そんな悠長な思考が刹那的に浮かんではきたが、どのイメージも良い方向へは向かわない。
事実、そのイメージに間違いはなかった。
おっさんは言葉を発さずにビニールから剥き身のナイフを取り出した。
刃がこちらを向いている。
様々な思考が錯綜している頭とは裏腹に、体は硬く、冷たく、重たい。
男が近づいてくる。怖い。離れたい。
だが体はうまく動かせない。
ごめんなさい、落ち着いて、なんで•••
そんな言葉も出せなかった。
ナイフが下側から突き上げるように心を貫いていく。
目の前の有象無象は、釣り針を離さなかった。逃げなかった。理解しなかった。
認めて欲しかった、構って欲しかった、接して欲しかった。
餌だと思って食いついた魚は、釣り針だと気づいた途端暴れ出す。
それを静止できずに、は鱗や鰭で怪我をすることがあるらしい。
どちらの釣りも、魚の扱いは慎重にしなければならない。
まとめ

本物かどうかはぱっと見では判別できないほどAIの技術は進歩している
釣りをして愉しむ行為は推奨されるべきものではない
釣りだけでなくSNSを利用している全ての人は、ネットリテラシーを理解し利用に及んでほしい
以上で、【SNSの怖い話】「釣り」を紹介※眠れなくても責任取れませんを終わります。
他にも、【SNSの怖い話】「厳選4選!!」を紹介※眠れなくても責任取れませんという記事もあるので、興味がある方は是非ご一読ください。
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