あなたは怖い話は好きですか?
老若男女、一度は見たり聞いたりなど、怖い話に触れる機会はあるのではないでしょうか。
そんな中でも「夢の怖い話」は舞台としてはメジャーと言えるでしょう。
今回紹介する夢の怖い話は「逃げられない」です。
夜中に読むのはおすすめしません。
何故なら、眠れなくなっても責任は取れませんから•••
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
他の怖い話も気になるという方は、下記の記事を参照ください。
夢の怖い話「逃げられない」

不思議な夢を見た。
どんな夢かは思い出せないけど、とても嫌な内容だった気がする。
何が不思議かって、目が覚めた時に残っているあの感覚•••
寝起きのはずなのに頭は妙に冴えている。
寝ていたはずなのに身体は重くて疲れが取れていない。
身体全体に冷や汗が滲んでいて気持ち悪い。
まるで夢の内容を本当に体験していたかのように•••
どんな内容だったかを必死に思い出そうとするけど、断片すらも思い出せない。
もっと早く思い出せていれば、結果は変わったかもしれない。
もっと早く思い出せていれば、違う選択ができたかもしれない。
もっと早く思い出せていれば、また今日も夢を見れたかもしれない。
それでもやっぱり思い出せなかった。
本当に、夢って厄介だ。
私は喉元から捻り出すような、甲高い声を上げながら勢いよく上体を起こす。
とても不思議な夢を見た。
右手で髪をかきあげ、乱れた呼吸と共に整える。
湿った服が肌に張り付いて気持ち悪い。
柔くも眩しい光がカーテンから漏れ出している。
目を細め、朝であることを確認しつつ、思案に深ける。
•••だめだ、思い出せない。
思い出せないことに腹立ちを覚えながらも、支度をし出かける。
小骨が喉に刺さっているかのような不快感が頭に残る。
起きたすぐはいつも覚えているのに•••
通勤中、再度思い出せるか試してみたけど、結果は変わらなかった。
次第に思い出すこともやめていた。
思い出せないことも忘れていた。
夢を見たかどうかも頭には無くなっていた。
変わり映えのしない一日になるはずだった。
通勤中の重い足取り。
一日の始まりにうんざりしている自分。
そして、うだつのあがらない街並み。
何も変わりはしない。
強いて言えば、不思議な夢を見て、それを思い出せずに呻いていたけど、それも忘れてしまったことくらいだ。
何も変わらない。
何も変わらないはずだった。
夢の内容を思い出すまでは。
いつもみたいにマフラーで鼻先まで顔を隠す。
息で湿る布地に顔を顰めながらも通勤路を歩いていく。
視線を落としつつ、気分が乗らないのに仕事に行かなければならない理不尽に憂いていた時だ。
交差点に足を踏み入れるか否かの時に思い出した。
突然に。
夢の内容を。
それは走馬灯のように一瞬に、早送りのようではあるけど一場面も取りこぼすことがなく、鮮明に思い出せた。
私は交差点に掛けた足を引き戻し後退りする。
すぐ後ろを歩いていた男の人が、進まず、寧ろ引き下がった私を不思議に思ったのか、振り返りながらも私を抜いて歩いて行く。
そしてその男の人は、私の顔を見ながら、見たこともない挙動で真横に吹っ飛んでいった。
その顔は、表情一つ変わることなく無表情のまま私を視界に捉えつつ、私の視界から消えた。
トラックが交差点に突っ込んできた。
男の人はトラックに轢かれてしまった。
トラックはすぐに停車したけど、男の人はその後数メートルに渡り、軟体動物のように関節がないかのような挙動をしながら吹き飛んでいった。
私はすんでの所で止まり、引き返せた。
夢を思い出せたから。
私は轢かれずにすんだ。
夢の内容はこうだ。
「浮かない顔の女の人が、交差点に入り直進していると、突っ込んでくるトラックに気づかず轢かれてしまう」
なんとも捻りもない物語だと思った。
だけど、この物語を思い出せたからこそ私は息をしている。
吹っ飛んだ男性に自分を重ねながら心底「私じゃなくて良かった」と安心した。
私が見た夢は正夢だったんだ•••
そう思った時、一つの考えが頭によぎった。
「私が•••逃げたから•••?」
夢の中で轢かれたのは私だった。でも•••
夢の中で男の人は私の後ろを歩いていて、轢かれることはなかった。
私は俯いていてトラックに気づかなかったけど、きっとトラックに気づいて現実の私みたいに立ち止まったんだろう。
でも、現実では•••
立ち止まった私を不思議に思って、振り返っていたからトラックに気づけなかったんだ•••
そう考えた瞬間、胃を、内臓を掴まれたかのような圧迫感を覚える。
気づけば口から大量の吐瀉物をぶちまけていた。
事故を見たショックからじゃない。
私の行動で人一人の命を奪ってしまった罪悪感からだ。
それでも頭には残ってしまっていた。
「私じゃなくて良かった」と。
なんであんな夢を見たんだろう。
ネットを見れば、災害が•••汚職事件が•••とバツの悪いニュースが並ぶ。
テレビをつければ、通り魔が•••交通事故で•••と聞きたくもない情報が耳に入る。
そんなニュースばかり頭に入れば、不吉な夢も見てしまうはずだ。
あの事件はたまたまで、夢の内容もたまたまそれに酷似していただけ。
そう自分に言い聞かす。
その日は出勤する気にもなれず、会社を休んだ。
それから数日後、また不思議な夢を見た。
私は声にならない声を上げながら、条件反射のように身体を起こした。
左手に立っている鳥肌を摩りながら、既視感に襲われる。
だけど、やっぱり夢の内容も含めて思い出せなかった。
割れた爪が服や鞄に引っかかる時のような苛立ちを覚える。
それでも私は支度を始める。
次第に夢の内容が気にかかっていたことなんか忘れて、憂鬱な一日を始めていた。
会社の近くまで来ていた。
会社に隕石でも落ちればいいのに、なんて妄想を膨らませていた時だ。
大きなビルの横を通っていた時に思い出した。
突然に。
夢の内容を。
私は夢の内容を反芻しながら、ゆっくりと後ろへ下がる。
足が恐怖でうまく動かない。
足がもつれ尻餅をついてしまう。
焦りで心が乱れる。
身体が思うように動かず、そのままずって下がるような無様な格好になっていた。
こちらに向いて歩いていた男の人が私の姿を見て駆け付ける。
手を伸ばし「大丈夫ですか」と心配してくれていた。
私は声をあげる。
ハヤ•••テ•••
男の人は気づかず首を傾げている。
私は無様な格好を晒しながら後ろに下がる。
男の人が再度私に声を掛ける。
何を言っていたかはわからなかった。
口を開いた瞬間に押し潰されたから。
落ちてきた鉄骨に。
表情一つ変えないまま、私を見つめながら潰されてしまった。
私は無様ながらもその場から離れていた。
夢を思い出せたから。
私は押し潰されずにすんだ。
夢の内容はこうだ。
「冴えない女の人が工事中のビルから落ちてくる鉄骨に押し潰される」
ミステリー小説でしか聞かないような内容に吐き気を催す。
地面を伝う温かい血が、私のズボンの裾を濡らした。
赤い色素が染み付いたコートは、洗っても汚れが落ちることはなかった。
早く逃げてって•••伝えようとしたのに•••
夢の中では潰されたのは男の人じゃなくて、私だった。
私が尻餅をついているのを見て走って駆けつけたから•••
ここまでくると疑いようが無かった。
私が逃げると近くにいる誰かが犠牲になるんだ•••
その日も出勤する気にはなれず、会社を休んだ。
それから数日後、また不思議な夢を見る。
情けない奇声を上げながら、エビのように腰を曲げた。
額から伝う汗を右手で拭いながら唇を噛み締める。
前にも同じようなことが•••
どんなに思い出そうとしても思い出せなかった。
歯に挟まった繊維が口の中で主張を続けているような歯痒さを感じていた。
それでも私は支度を始める。
今日は彼氏と出掛ける日だった。
映画を見て、買い物をして、一緒にご飯を食べて、一緒に帰る。
そんな平凡な一日を送っていた。
帰り道、次はどこに行こうか、なんて話していた時だ。
人気の少ない夜道に差し掛かった時に思い出した。
突然に。
夢の内容を。
目の前を、一人の男の人が歩いてくる。
手には刃渡り30㎝程の刃物を持っていた。
彼氏は暗いから気づいていない。
私が気づけたのは•••きっと知っているからだ。
私は覚悟を決めた。
私は下がらずに進む。
真っ直ぐと、夢の内容を反芻しながら。
身体を突き抜けてくる刃物の感触。
自分から出たとは思えない程流れ落ちる血。
身体が足先から崩れ落ちていくような感覚。
夢と同じだった。
さっきまで繋いでいたはずの手が離れ離れになる。
温かかった指先が冷えて固まる。
楽しかった時間が嘘のように風化していく。
心までもが冷たくなっていくように思考が鈍く、薄れていく。
薄い白色を帯びた吐息も、もうすでに見えなくなっていた。
それでもどこか安心している自分がいる。
今度は•••私が•••
私の意識はそこで途絶えた。
後日、嫌なニュースが世間を賑わした。
男女二人の遺体が発見されたと。
まとめ

寝起きは思い出せなくても、時間が経ってから思い出せる夢もある
その場合は、何故が普段より鮮明に思い出せ、記憶に残っているケースが多い
また、都合良く忘れたり、都合良く思い出したりする。夢とは何とも厄介なものだ
以上で、【怖い話】夢の怖い話「逃げられない」を紹介※眠れなくても責任取れませんを終わります。
他にも、【怖い話】夢の怖い話「厳選5選!!」を紹介※眠れなくても責任取れませんという記事もあるので、興味がある方は是非ご一読ください。
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