あなたは怖い話は好きですか?
老若男女、一度は見たり聞いたりなど、怪談に触れる機会はあるのではないでしょうか。
そんな中でも「SNSの怖い話」は舞台としてメジャーと言えるでしょう。
今回紹介するSNSの怖い話は「なりすまし」です。
夜中に読むのはおすすめしません。何故なら、眠れなくなっても責任は取れませんから•••
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
他の怪談も気になるという方は、下記の記事を参照ください。
SNSの怖い話】「なりすまし」

私はアイドルをしています。
アイドルとは言っても、そこまで知名度はありませんでした。
テレビに出ることも少ないのでお茶の間の皆さんも私の顔を見たことがある人は少ないでしょう。
「可愛い」「絶対売れる」なんて決め文句で誘ってくれた事務所へも、今では週一回足を運ぶか運ばないかくらいしか行く用事がありません。
スケジュール帳を開けば、仕事やプライベートの用事より休日の多さが目立ちます。
そんな売れないアイドルの私ですが、ある事がきっかけで一躍有名になることができました。
それは私が望んでいたことではありますが、私の力で手に入れた物ではないんです。
そして望んでいる物が望んだ形で手に入るとは限りません。
ましてや、他力で得た歪な物が、いつまでも続くなんてことはあり得ませんでした。
「SNSを初めてみないか」
閑古鳥が泣いている私の知名度に対して、事務所が出来る唯一の提案だったんだと思います。
最近では著名人だけじゃなく、駆け出しの俳優や、売れないアイドルもSNSで名を売る時代なんだとか。
テレビの中では垣間見ることができない私生活を、スマフォを通して指先一つで覗くことができる、その手軽さがファン獲得の一助になると説明を受けました。
普段からSNSは使用しているので、苦労することはないだろうと思い二つ返事で快諾しました。
正直、今の知名度がそこまで上がることはないだろうとは思いました。
ですが、何もしない、することがない現状から少しでも抜け出したくて、新しいことを初めて気持ちを紛らわそうと考えたんです。
いつまでも、売れないアイドルを事務所が囲ってくれるとは思えませんし•••
手始めにアカウント設定から入りました。
名前を決め、アイコンを設定し、プロフィール欄を記入•••
投稿は必ず写真を載せて、オシャレなカフェや、話題の撮影スポットでの写真を載せました。
やるなら本気で•••と思い、少し遠いところでも足を運びました。
ですが、やっぱりフォロワーやいいね、リプライやメッセージ•••SNSからの通知はあまり鳴りませんでした。
閑古鳥はネットでも泣くということでしょうか。
そんな状態が一ヶ月以上続きました。
認知されていないSNSがリアルで影響するわけがない、そう思っていたのですが•••
スケジュール帳が埋まり出したんです。
週二日予定が埋まれば御の字となっていたんですが、三日、四日と増えていきました。
もちろん、一日丸々予定で埋まる•••までは行かなかったですが、それでも目に見えて予定が入っていったんです。
やったことといえば、SNSを稼働したくらいです。
数百人しかいないフォロワーの影響はここまででかいのか•••いや、まさか•••なんて思いつつも、埋まっていくスケジュール帳を眺めている時間がとても幸せでした。
少し不思議には思っていましたが、棚から落ちてきたぼた餅を大事に頂くことにしました。
もしかしたらSNSも少しは影響があるのかもしれない、そう思ったので根気よく続けることにしました。
調子に乗って呆けていると餅を喉に詰まらすかもしれませんしね。
スケジュールは埋まっていっているとはいえ、片足を泥沼に突っ込んでいる自覚はありました。
自分で自分の首を絞めないよう、他のアイドルの投稿をチェックしていた時です。
一つのアカウントが目に止まりました。
一瞬自分の目を疑いました。
一度、二度、三度と見直します。
それでも目に写る映像は変わることはありませんでした。
アイコンには私の写真が使われいて、プロフィールも私が書き込んだのかと思うほど私のことが詳細に書かれていました。
私の目に写ったのは、私と同性・同名のアカウントでした。
なりすましなのだと気づきました。
こんな売れないアイドルになりすましてどうするんだ、と驚きましたが、何より驚いたのはアカウント名の最初に【公式】と書かれていたことでした。
なりすましにしては大胆不敵、怖いもの知らずだな•••
そう思っていたのは、事務所のアカウントと紐づけられているのを発見した時まででした。
開いた口が塞がりませんでした。
そういえば、私のアカウントは事務所と紐づけられていない•••
フォロワー数も圧倒的に私より多い•••
これじゃどちらがなりすましかわからない•••
あまりの出来事に頭が追いつきませんでしたが、感覚で理解していました。
仕事がうまくいっているのはこのアカウントのおかげなのだと。
投稿を見ると私より断然フォロワーのアクションが多く、いいねやコメントで溢れています。
私が人気スポットに足蹴なく通っていたのに対し、なりすましのアカウントは実写こそないのですが、チェーン店の料理写真や、市販のコスメなど誰でもどこでも手が届く物が載せられていました。
添えられている文章も、要点がしっかりとまとめられていて、感想だけじゃなくフォロワーへ問いかけるような内容のものが多い•••
フォロワーとのコミュニケーションも欠かしていないことが窺える投稿に、逆に勉強になってしまいました。
人気が出る、人気を獲得するのはこういうことかと•••私がやっているアカウントが恥ずかしくなるほどに•••
【公式】と銘打っているだけあって事務所での私のスケジュールに追って投稿している内容もありました。
流石なりすますだけはあるなと感心もしていましたが、一つ気になった投稿がありました。
それは「◯月△日、□時入り」テレビ出演が決まりましたと書かれた最新の投稿でした。
首を傾げます。
私自身聞いていないからです。
不思議に思いました。何故なら、見通した投稿で仕事に関するものには嘘や偽りが無かったからです。私が知る限りは。
まさか•••そんなはずは•••
事務所に確認しようかと思いましたが、【公式】と書かれたアカウント、実際に事務所と紐づいているのは、なりすましという事実•••
少し怖いなと思いました。
当日はスケジュールも空いているので試しに行ってみよう•••嘘だったら帰ればいい•••
そんな軽い気持ちで局に向かいます。
すると•••
「待ってました、こちらにどうぞ」
スタッフの方から楽屋へ通されてしまいました。
今まで楽屋なんてなかったのに•••
と思いはしましたが、それよりなりすましの投稿が予言めいて当たっていたことに驚きを隠せませんでした。
事務所の人に聞いてみようとしましたが、すんでのところで思いとどまります。
何故なら、聞いたところで「知らなかったのなら何で来れたの?」と聞かれてしまうからです。
そうなると、なりすましのアカウントについて触れなければならない•••そう思うと聞こうにも聞けませんでした。
そのまま頑張って仕事を終わらせました。
帰り際になりすましのアカウントを確認すると、同じように最新の投稿で仕事のスケジュールに触れられていました。
私は疑心暗鬼ながらもスケジュールに合わせて行動します。
怖いな•••
という思いは時間と共に消えていきました。
なりすましのアカウントは徐々にフォロワーが増え、私のスケジュールは埋まっていく。
テレビでの認知度も上がり、忙しい日々が続きます。
ファンだけじゃなく、私にとっても私のアカウントは無くてはならないものとなりました。
フォロワーが増えるたびに私も喜ぶ
コメントがあれば胸が弾む
いいねには私も返す
私のアカウントが成長することで私自身も一喜一憂できました。
私のアカウントの投稿内容も人気に応じて少しずつ変わっていきました。
チェーン店やプチプラばかりが主流の投稿から、高級料理店での食事風景、ブランド品を身につけた首から下の写真。
私より私を楽しんでいる投稿には親心のような暖かい思いになりました。
次の投稿はどんなものか•••待ち遠しい気持ちはファンの誰よりも強いです。
その日も私のアカウントを確認していました。
最新投稿のコメントを見たときです。
目を見開きました。
コメントの数も多かったですが、その内容に驚嘆したんです。
「騙しやがって」「嘘つき」「卑怯者」「金を返せ」
そんなコメントが並んでいました。
ネットニュースにも取り上げられます。
事務所から記者会見を求められました。
記者の人達に問い詰められます。
「写真に写っていた指輪はどういうことですか?」
どうやら、投稿した写真に写っていた手に、指輪が嵌められていたとのことでした。
そして、その指輪が有名アイドルが付けていた物と同じなのだと•••
シャッターが切られます。記者の人から質問が飛びます。
私自身体験していない内容を私が答えることはできません。
記者会見は理路整然としないまま終えてしまいました。
世の中からのバッシングは凄まじかったです。
ウェブを開けば記者会見の是非を問うもの、相手との接点、あるかどうかもわからない憶測•••
何一つ身に覚えはありません。
ですが、何一つ弁明もできません。
私のアカウントは沈黙してしまいました。
記者の人が家にやってきます。
昼夜問わず怒声が聞こえることもありました。
埋まっていたスケジュールは見る影も無く、家から出ることもままなりません。
楽しかった日常は地獄へと変わってしまいました。
何をしても気は紛れません。
テレビを見れば私の話題で持ち切りに。
私のアカウントへは誹謗中傷が絶えない。
ご飯も味はなく、まともに眠れたのはいつなのかも覚えていません。
自然と涙が溢れてきます。
手で顔を覆います。
「なんでこうなったの•••」
何度呟いたでしょうか。
何も変わらない状況に救いを求めていました。私へと•••
ピロン
スマフォの通知が鳴ります。
私がアカウントを更新した通知でした。
内容を確認します。
「今までありがとう。さようなら」
私は救われた気持ちになりました。
私はスマフォを置き、ロープを握り首を撫でます。
私が招いた私の状況を、私を信じた私自身を、夢を見せてくれた私を•••
呪いながら括ります。
まとめ

なりすましは場合によっては名誉毀損などの処罰の対象になる
本人よりなりすましの方が人気になるケースも珍しくはない
本人よりも本人を演じるなりすましは、果たしてなりすましと言えるのか•••
以上で【SNSの怖い話】「なりすまし」を紹介※眠れなくても責任取れませんを終わります。
他にも、【SNSの怖い話】「厳選4選!!」を紹介※眠れなくても責任取れませんという記事もあるので、興味がある方は是非ご一読ください。
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