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【怖い話】ストーカーの怖い話「もっと」を紹介※眠れなくても責任取れません

泣いている女性 オカルト

 あなたは怖い話は好きですか?

 老若男女、一度は見たり聞いたりなど、怖い話に触れる機会はあるのではないでしょうか。

 そんな中でも「ストーカー」は舞台としてはメジャーと言えるでしょう。

 今回紹介するストーカーの怖い話は「もっと」です。

 夜中に読むのはおすすめしません。何故なら、眠れなくなっても責任は取れませんから•••

 それでは、ごゆっくりお楽しみください。

 他の怪談も気になるという方は、下記の記事を参照ください。

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【怖い話】ストーカーの怖い話「もっと」

ぶれる女性

 これは私が大学に通っていた時の話。

 初めての一人暮らしということもあり、右も左も分からない手探り状態だった。

 親には無理を言って仕送りをもらいながら生活していた。

 あまり裕福な家庭とは言えないので、少しでも仕送りが少なくて済むように私もバイトで日銭を稼いでいた。

 思い描いていたような、楽しく余裕のある大学生活を謳歌している、とは言えないけど、それでも自分の選んだ道、親が応援してくれる環境に満足している。

 そして、一人暮らしを始めて親の偉大さにも気付くことができた。

 食事、洗濯、掃除、全て自分でしなくても良かったのだから。

 中でも郵送物の管理は初めてだった。

 ポストを自分で見たことがなかった•••あっても•••年賀状を楽しみにしていた時くらいか•••

 だけど、毎日ポストを見るという習慣は、一人暮らしでは必須のスキルになる。

 あまり几帳面とも言えない私の性格では、正直難しいものがあった。

 払込用紙に気づかず、電気やガスが止まったなんてことはしょっちゅうだ。

 •••水道まで止まったこともあったくらいに。

 まあ、ポストを見ても払い込みに行くのをサボりがちだ、ということもあるのだけど。

 なんせ、引き落としにできるという申請書ですら送るのを手間に思っているくらい•••

 それでも、そんなズボラ、というよりガサツな私が「ポストを毎日見る」という億劫な習慣を身につけることができた。

 勇気はいるけど、今では毎日のように確認することができている。

 そんな習慣、身に付けたくはなかったのだけど。


 大学生活はそれなりに楽しかった。

 一人暮らし、大学、バイト•••

 初めてが多く戸惑う場面も少なくなかったけど、乗り越えることができたのは、頼りになる親友がいたからだと思う。

 彼女は私と正反対な性格をしていた。

 几帳面で、一度決めたことは曲げず、何事にも動じない姿勢は羨ましくも思えた。

 当時働いていた居酒屋のバイトも彼女から紹介してもらった。

 面接とか緊張していたけど、彼女からの紹介ということであまり面接の体を保っておらず、すぐに採用がもらえたあたり、彼女の信頼度はバイト先でも高かったのだと思う。

 私も正直頼りきりになっていた。

 そんな彼女との出会い方•••今思い返すと、この時から私と彼女の間柄は決まっていたのかもしれない。

 それは、大学での講義に受講していた時のこと。

 大きな講堂での講義、先生から名指しで問いを答えるよう指名された時だった。

 講義を聞いていれば問題なく答えることができたのだと思う。

 今考えてもそれほど難しい問いではなかった。

 だけど答えることができなかった。

 講義中寝ていたわけではない。

 講義以外のことを考えていたわけでもない。

 単純に、聞こえなかった。

 先生の声が。

 他の先生方はマイクを使って講堂全体に聞こえるよう配慮してくれるが、この先生はそうではなかった。

 マイクを忘れたのか、はたまた地声に自信があるのか•••

 そのせいで講堂の後ろの方では先生の声を聞き取るのが難しかった。

 名指しで指名されたときも、私のことかと理解するのに時間がかかるほどに。

 というか、名指しをしても返事がないことに先生が腹を立て、今までよりも声を張り上げてくれたおかげで気づいたのだけど。

 めちゃくちゃ焦った。今までの講義で頭に入ったのは、私が指名されたんだ、ということと、多分受けている講義は外国語科目だったはずということくらいだった。

 英語のはずなのに、聞こえないせいで余計にわからない。

 適当に答えても当たるはずはないので、私は「わかりません」と答える。

 そして、先生は私に言う。

 今までの講義を聞いていればわからないはずなはい、と。

 そりゃ聞いていればわかりますよ。いや、聞こえていれば。

 だけど、他の受講者もいる中先生に指摘をする、という大胆なことは私にはできなかった。

 先生の執拗な追い討ちに応えあぐねていると•••

 「聞いていればわかりますよ。馬鹿じゃないんだから。でもね、そんな小さな声で聞こえるわけないじゃないですか」

 と聞こえてきた。先生より大きな声で。

 それこそ、講堂の隅から隅まで聞こえるような澄み渡る声で•••

 私は耳を疑った。

 心の声が漏れたのかと。

 でも違った。

 私の気持ちを代弁し、他の受講者が思っていたであろう不満を、ぶつけてくれたのが彼女だった。

 先生の様子を見るに、反論しようとしてたのだと思う。

 だけど、先生がこのことに対して弁論することはなかった。

 それは、受講者全員が冷たい目線を先生に向けていた、ということもあると思う。

 でも、それ以上に彼女の圧力が強かったのが原因だろう。

 私からは後ろ姿しか見えなかったのだけど、身動き一つせず、睨むように先生に視線を向けていたのが、後ろ姿からわかるくらいだ。

 直に受けている先生は相当のものだったと思う。

 数分は経ったか。いや、数秒だったと思う。そう思ってしまうほどに、講堂内の空気は重く静まりかえっていた。

 そして、先生は何事もなかったように講義を進め始めた。

 声は心なしか大きくなっている。

 それでも後ろの方では聞こえ難かったけども。

 講義後、私から彼女に話しかけた。

 話した内容は、先生との間に入ってくれて助かった、であったり、立ち上がって先生に意見する姿がかっこよかった、とかだったと思う。

 彼女ははにかみながらも気さくに対応してくれた。

 そんな笑顔が私にはとても可愛く写る。

 それから彼女との距離が縮まるのにそう時間は要らなかった。

 何気ない会話から、私生活についてまで彼女は積極的に話を聞いてくれたのを覚えている。

 その頃だったかな。決めきれない私にバイトを紹介してくれたのも。

 彼女のおかげで毎日楽しく生活できていた。

 頼ることができる親友がいるというのは本当に心強く思った。

 生活の中で、少しずつ心に余裕も出来てきた頃だった。

 バイトの帰り道。

 家までの帰り道は人通りの多い道路や、歓楽街が続くわけもなく、細い小道であったり、小さな住宅街を通る。

 当たり前のように煌々と灯が灯っているということはない。

 だけど、その日は空気も澄んでおり、月明かりが優しく辺りを照らしてくれていた。

 心なしか気持ちも晴れ渡っていた。

 違和感に気づくまでは。

 何かがおかしい。

 唐突にそう思った。

 いつもと同じ時間、同じ帰り道•••

 何が違う•••

 違和感の正体にはその後すぐに気づくことになった。

 足音が聞こえる。

 気配を感じたという方が正解か。

 少し後ろに人がいる•••

 そういう気配。

 最初は帰り道が同じなのかな、くらいにしか思わなかった。

 だけど、曲がり角を一つ、二つ、曲がっても気配は消えることがなかった。

 おかしい•••

 だけど振り向くのは怖い•••

 そう思い、私は早足で帰ることにした。

 急に走り出したら•••何が起こるかわからないのから。

 競歩並みに早かったと思う。

 ここまで早足なら、走ってるのと同じだ、と思えるのは事が終わっている今だからだろう•••

 家の近くまで来た。

 一旦落ち着いて歩く速度を元に戻す。

 平然に•••何事も無かったかのように•••

 そして、耳を澄ます•••

 •••

 足音は聞こえなくなっていた。

 私は胸を撫で下ろし、借りているマンションに入った。

 一息つき、オートロックに鍵を差し込みエレベーターに乗り込む。

 振り返り、自分の階数のボタンを押す。

 さっきの足音はなんだったんだろう•••

 やっぱり帰り道が途中まで一緒だっただけかな•••

 そんなことを思っていた。

 少し走っていたから身体はまだ熱を帯びている。

 大きく深呼吸をし、落ち着いてきた呼吸を再度整える。

 安心しきっていた。

 身体の熱は芯から冷え、整ってきていた呼吸も早く、そして浅くなった。

 閉じてくるエレベーターの隙間から、人影が見えたからだ。

 その人影は、オートロックより奥にいて、鮮明に見えることはなかったが、確実にこちらを覗いているのがわかった。

 閉まってしまった扉•••

 怖い、何が起こったの、帰り道が一緒なだけじゃ•••閉まっちゃった•••誰が•••怖い、気持ち悪い•••

 私は急いで部屋に入り鍵をかける。

 恐る恐る、窓からカーテンの隙間を縫うようにマンションの入り口に視線を向けた。

 暗くてよく見えなかったが、確実に居た。

 人影が。私の部屋を睨むように。

 目が合った、そう感じる瞬間があった。

 私は逃げるように目を伏せ窓の鍵をかける。

 しまった•••

 そう思ったのは少ししてからだった。

 こんなに大きくリアクションすれば、部屋の位置を教えるようなものだ、そう考えが及ばなかった自分を恨んだ。

 だけど、それは仕方がないことだった。

 だって足が竦むほど怖かったんだから。

 その日はあまり眠れなかった。人影が脳裏に焼き付いて離れない•••

 次の日、大学に行く時も気が気じゃなかった。

 もしかしたら昨日の人影がまた追ってくるかもしれない•••

 そう思いながらキョロキョロしつつ大学へ向かった。

 大学についてから、その心配が杞憂だったことに安心する。

 私は、彼女に昨日の人影について話をすることにした。

 彼女は少し驚いた顔をしながらも、真剣に話を聞いてくれた。

 警察に相談しようかと思っていると打ち明けたところ、警察は証拠が無いと動いてくれないとアドバイスをもらった。 

 確かにそうだ。この手の話は決め手がないと動いてくれないと聞く。

 それに、もしかしたら勘違い、ということもまだあり得るのかもしれない。

 私は彼女の意見を聞き、少し様子を見ることにした。すごく心配だけど。

 「何かあったら言ってね。すぐに駆けつけるから」

 彼女の言葉が心の支えだった。

 その日もバイトを終え家路に着く。彼女に一緒に帰ってもらえるようお願いしようと思っていたけど、彼女は非番だった。

 月も陰っており、暗く何かを予感させるような気持ち悪さのある夜•••

 人影の気配はないが、いつもより歩調は早かったと思う。

 家まで着いた。けど安心はしきれない。

 だって、昨日は•••

 そう思いながらオートロックを解除しようかと鍵を探しつつ自動ドアに向かっている最中、ポストに目がいった。

 普段はあまり気にも留めないのだが、自分のポストにだけ大きな封筒が刺さっていたのが気になった。

 首を傾げる。

 広告や宣伝なら他の部屋のポストにも入っているはずだ。

 いや、確かに深夜だからみんな回収したのかもしれない。

 人影のことを心配してはいたが、何故かその状況に非日常的なものを感じた。

 私はポストの中を取り出し、オートロックを解除しエレベーターに乗り込む。

 その間は何度も自動ドア越しにマンションの入り口を注視していた。

 もうトラウマに近い。

 だけど、昨日のようなことはなく、無事に部屋まで辿り着いた。

 やっぱり気のせいだったのかもしれない。

 警察に相談する前に彼女の意見を聞いて正解だった。

 私は大きな封筒に手を伸ばす。

 宛名や宛先の記入もない。

 直接ポストに投函された物だろう。

 私は封を開け中身を確認する。

 ?何も入っていない。

 おかしいな。

 空の封筒?

 私は何気なしに封筒を逆さまにし、振ってみる。

 パラパラパラ

 何かが落ちてきた。

 私は驚愕した。

 •••爪だ。

 爪が入っていた。

 私はその光景に後退りする。

 小さく呻くような聞き苦しい悲鳴を漏らしていたかもしれない。

 足は震え目には涙を浮かべていたかもしれない。

 私は、しばらく動けずにいた。

 バックが震えているのに気づく。

 私が動けたのはそれからだった。

 震える手でスマフォを取り出す。

 相手は、彼女だった。

 私は藁にも縋る思いで電話に出る。

 拙かったと思う。怖くて頭は回らない。言葉もうまく出ず、単語を並べているだけだった。

 それでも彼女は状況を把握してくれたのだろう。

 「今から行く」

 その言葉がどれだけ嬉しかったか。

 しばらくして玄関が開く音がする。

 彼女が走ってリビングまで来てくれた。

 いまだにへたり込んでいる私をみて駆け寄ってくれる。

 落ち着くまで傍に居てくれた。

 •••爪も彼女が処理してくれた。

 非番だったとは言え、朝まで話を聞いてくれた彼女に感謝しかなかった。

 次の日、彼女の受ける講義は無いらしく、頼ってしまった私としても罪悪感は薄まった。

 私もその日はバイトは非番だったから明るいうちに帰宅することができた。彼女は家まで送り迎えしようか、と言ってはくれたが、シフトに入っていたのを知っていたため遠慮した。

 明るいうちだから何もないだろうとたかを括っていたのもある。

 そして、家まで何事もなく着くことができた。

 だけど•••

 昨日と同じように大きめの封筒が入っていた。

 私のところにだけ•••

 まだ日も暮れていない時間帯だ。

 私以外の部屋の人がこの時間までにポストの中身を回収•••する?

 嫌な予感しかしなかった。

 手に取らず部屋に入る•••

 そういう選択肢もあったと思う。

 だけど•••

 このまま置いておくと、ポストだけじゃなく、部屋まで来るのでは•••

 という思いが頭をよぎる。

 私は封筒を手にする。

 宛名や宛先はない。

 封を破る。

 何も入っていない。

 逆さまにし振ってみる。

 ポロッ•••

 何かが落ちてきた。

 私は驚愕した。

 •••歯だ。

 歯が入っていた。

 形から言えば•••奥歯だと思う。

 うまく泣くことの出来ない赤ちゃんのような、短くも嗚咽に似た声を出していたかもしれない。

 足に力が入らず、その場にしゃがみ込んでしまっていたかもしれない。

 私はしばらく動けずにいた。

 お尻から震えている感覚が伝わる。

 私が動けたのはそれからだった。

 私はスマフォを手に取る。

 相手は彼女だった。

 私は藁にも縋る思いで電話に出る。

 子どもが親に泣きながら事情を話すように、聞こえにくく、理解に時間がかかるであろう説明に、彼女は耳を傾けてくれた。

 それでも彼女は状況を把握してくれたのだろう。

 「今から行く」

 バイトは休むと添えた彼女の言葉に、拒むことはなくむしろ安心感を持った。

 彼女は数分でマンションまで来てくれた。

 いまだにへたり込んでいる私をみて駆け寄ってくれた。

 私は再度事情を説明した。今度は落ち着いて順を追って話すことができたと思う。

 それを聞いて、彼女は落として放置していた歯を処理してくれる。

 マンションの屋上に向けて投げているのを見る限り、下の歯だと思ったらしい。

 部屋まで向かおうとしたとき、彼女は私のポストを見てくれていた。

 他に郵便物は無く、怪しいものが入っていないか確認してるらしい。

 彼女を部屋まで案内し、これからどうしようと相談する。

 これだけ証拠があれば警察も動いてくれるのではないかと話してみる。

 彼女はこう話した。

 確かにここまで証拠があれば警察も動いてくれる。けど•••

 そう。証拠は処理してしまっていた。

 爪は捨て、歯は投げてしまった。

 歯は見つけれるかもしれないけど•••

 処理してしまった自分に責任がある、と彼女はしばらく泊まり込んでくれることを提案してくれた。

 私としてはこの上ない提案なのだけど、処理を任せてしまった私が悪いと釈明した。

 その日は彼女が一緒のベットで眠ってくれた。

 しばらくあまり眠れてなかった私は、久しぶりに熟睡することができた。

 次の日、お互いに同じ講義を受講する予定だったので、一緒に家を出た。

 誰かと一緒に居る、なんて安心するんだろう•••

 部屋を出てエレベーターに乗り、マンションを出る。

 その最中、彼女は私のポストを確認した。

 昨日は何も入っていなかったであろうそのポスト。

 一通の小さい封筒が入っていると彼女は言った。

 私の警戒心は緩んでいたと思う。

 私はその封筒を手に取る。

 宛名も宛先もない。

 封を開ける。

 紙が一通入っていた。

 私は取り出し読み上げる。

 「ずっと一緒だよ」

 私は驚愕した。

 手紙が入っていた。

 定規を使い書かれたであろう直線のみの文章に恐怖を感じた。

 現状を理解しきれず、恐怖のあまり鯉のように醜く口を動かしていたかもしれない。

 足が崩れたかのように力が入らず、彼女に寄りかかっていたかもしれない。

 私はしばらく動けずにいた。

 彼女が言う。

 「大丈夫。私がいるから」

 彼女の言葉に救われる。

 それからしばらく、大学に行くときもバイトのシフトも、彼女と一緒に入り、彼女との時間が多くなった。

 その分、心は安らいだし、彼女という存在に救われもした。

 彼女が一緒に居てくれたからか、あの日以来、封筒がポストに入っていることはなかった。

 数週間、彼女は付き合ってくれていた。

 流石にそれくらい音沙汰も無ければもう大丈夫だろうと思った。

 彼女にも話すと、もうしばらく•••とは言ってくれるものの、いつまでも彼女を私物化はできないと伝える。

 私は安心しきっていた。

 その日、バイトを予定していたが、大学の課題が終わりそうにないため、バイト先には無理を言って急遽休むことにした。

 まだ陽が明るい中、私は家路に着く。

 マンションに足を踏み入れ、オートロックを解除しようと自動ドアまで向かう。

 ふと顔を上げる。

 私は驚愕した。

 私のポストの前に誰かがいる。

 身体に力が入る。

 息を呑む。

 背中に変な汗をかいてきた。

 目を逸らせない。

 私はその人影を凝視していた。

 そして、気づいた。

 その人影は彼女だった。

 私のポストをまさぐり、何かをポケットから取り出していた。

 立ち竦んでいた私に気づき、驚いたような表情で彼女が話しかける。

 今日はシフトじゃなかった?どうしたの?体調悪い?

 彼女はやや早口ではあるが、いつものように私の心配をしてくれる。

 それが私は気持ち悪かった。

 なんで気持ち悪いんだろう•••

 何か引っかかる•••

 その違和感にはすぐに気づいた。

 彼女がポケットから出したのが、封筒だったから。

 私が封筒に目を向けると彼女は説明する。

 これ?ポストに入ってたんだよ。あれ以降心配で•••

 私は言った。

 今、ポケットから出してたよね•••

 彼女は言葉に詰まる。

 ポストから出して•••それで•••一度出して•••

 普段の頼りになる彼女の姿はそこにはなかった。

 私は言う。

 もしかして•••今までの•••

 彼女は黙ってしまう。

 沈黙が、答えだったのだと私に語りかける。

 私は彼女の様子を見て聞かずにはいられなかった。

 どうして•••

 彼女は大きくため息をついた後、悪びれる様子もなく話出す。

 その様子に後悔や謝罪というものはなく、むしろ開き直り、そうであるのが必然のように、そうであったのが当たり前のように言葉を紡ぐ。

 「もっと」

 「もっと」

 「もっと」

 「もっと頼ってほしかった」

 彼女が語る内容は、どれも自分を肯定するもので、私の気持ちを配慮するものは含まれてはいなかった。

 優しく、頼りになると思っていた彼女は、私が作り出した偶像であり、そうなるように彼女が仕向けた結果だった。

 私は、その場で彼女が控えるよう促していた警察を呼び、彼女との悪縁を切ることにした。

 彼女は最後まで私と一緒に居たいとか言っていた気がするけど、私はそうじゃなかった。

 警察では事の顛末を話した。彼女は最後まで否定していたらしいけど、最後に持っていた手紙、マンションの監視カメラが証拠となった。

 法的な措置までは望まないけど、もう顔も見たくないので、警察から彼女へ「警告」つまり厳重注意をしてもらった。

 今回は急な用事でバイトを休んだから気づけたけど•••

 このまま気づかなかったらどうなっていたか•••

 それほど、彼女が語った物語には狂気が満ち満ちていた。

 最初に講堂で話しかけてくれた時、すごく嬉しかった。頼られるのって、こんなに心地良いって知ったの。

 紹介したバイトも、夜遅く終わるから心配で•••事件に巻き込まれないように後ろに着いてたんだけど•••まさか不審者扱いされてるとは思わず少し驚いたかな。

 まあ、おかげで家も知れたんだけど。

 思わなかった?爪の封筒の時、「今すぐ行く」って言ったよね?

 思わなかった?玄関を開けてまっすぐリビングに駆けつけた時。

 私、今まで家に行ったことなかったよね?

 大変だったよー。合鍵を作るのは。

 ドキドキしたよー。誰かに見られないかな、って。

 でも仕方ないよね。頼ってもらうにはこうする他なかったんだもん。

 毎回家まで着いていって、タイミングを見て電話をするのもなかなか難しいんだよ?

 少しでもタイミングがずれると台無しだし。

 それでも、頼ってくれた時はすごく嬉しかった。

 努力が報われた気がしたよ。

 ん?泊まった時、どうやってポストに手紙を入れたのかって?

 簡単だよ、歯を投げた後、ポストを見てたでしょ?あの時に入れたの。今みたいに。

 まあ、今回は見つかっちゃったんだけどね。

 一緒に生活してた時、すごく楽しかったなー。

 でも•••なんでやめようなんて言い出すかな。

 あんなに頼ってくれたのに。

 私はずっと一緒に居たかったのに。

 どうして•••

 もっと 

 もっと

 もっと

 頼ってほしかったのに。

 彼女の言葉が、声が、感情が•••まだ私の中に残っている。

 風の噂では、彼女は大学も中退してしまったらしい。

 バイトはすぐに私が辞めたから続けているかどうかは分からないけど•••

 警告がどれだけの効力があるか•••それでも私は前を向いて歩くことにした。

 自分が決めた道だ。

 怖いこともあったけど、めげずに進まないと•••

 苦労をかけた両親のためにも。

 私は今日も大学での講義を終え、新しいバイト先で日銭を稼ぐ。

 奇しくも習慣化してしまったことを呪いながら、ポストの中身を確認する。

 封筒が一通入っていた。

 宛名や宛先が記入されていない。

 •••

 まだ私と彼女の狂気の物語は終わっていないみたいだ。

んまとめ

引き裂かれるハート

必ずしも、見知らぬ人物がストーカーになるとは限らない
宛名や宛先が入っていない郵送物には注意が必要
証拠がない状態でも適宜警察へは連絡を取るべき

 以上で、【怖い話】ストーカーの怖い話「もっと」を紹介※眠れなくても責任取れませんを終わります。

 他にも、【怖い話】ストーカーの怖い話「厳選4選!!」を紹介※眠れなくても責任取れませんという記事もあるので、興味がある方は是非ご一読ください。

オカルト都市伝説
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pamyu

ブログ内では主にオリジナルのホラーを投稿していますが、Xではブログの宣伝以外はほぼ関係ないことをぼやいています。人間性が垣間見えると思いますので興味があればれっつふぉろー。

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