あなたは怖い話は好きですか?
老若男女、一度は見たり聞いたりなど、怪談に触れる機会はあるのではないでしょうか。
そんな中でも「事故物件」は舞台としてはメジャーと言えるでしょう。
今回紹介する事故物件の怪談は「まだいる」です。
夜中に読むのはおすすめしません。
何故なら、眠れなくなっても責任は取れませんから•••
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
他の怖い話も気になるという方は、下記の記事を参照ください。
【事故物件の怪談】「まだいる」

桜芽吹く春の出来事。
転勤をきっかけに新居に引っ越すことになった俺は、春の爽やかな風と一緒に新しい一歩を踏み出していた。
友達も少なく、ましてや彼女なんていない俺にとっては、転勤なんて屁のカッパだ。
むしろ、新天地では春風と一緒に素敵な出会いが待っているかもしれない、という期待の方が大きかった。
気候も安定していて、外に出れば春の陽気が全身を包み、冬で縮こまっていた身体が解れていくような感じがした。
心なしか身体が軽く、気分は晴れやかで、何か物事が良い方向に向かうような、そんな不思議な予感がしている。
新居や家電、ライフラインも整えて、全てが順調に進んでいた。
これから始まる新生活を、思いっきり楽しめるんだ。
新たな門出に心が躍る。
だけど•••
•••そうはならなかった。
転勤を言い渡された。
俺の勤めている会社ではそこまで珍しいことじゃなかった。
実際、一緒に勤めることになった同期の仲間も、今では各地に散らばっていて顔を合わす機会も無い程だ。
だから転勤の辞令をもらったときも、「引っ越しとかめんどくさいな•••」くらいにしか思わなかった。
だけど、実際転勤先に出向き、新居を探したり、新しい家電を見てまわったり•••
初めて家を出た時のことを思い出して懐かしい気持ちになった。
新居は会社に近いところで•••間取りは•••バス、トイレは別だよな•••家賃が•••
なんて悩んでいるのも楽しかった。
家電はほとんど前の家から持っていく事にしていたけど、古くなった掃除機だけは買い換えようと思っていた。
家電量販店に行けば、「新生活応援フェア」なんて謳った看板がデカデカと各コーナーを彩っていた。
お手頃な掃除機はないかと探していた時、一つの商品に目が止まった。
お掃除ロボットだ。
自分で掃除機を掛けなくても、勝手に掃除してくれる•••なんて便利なんだ。
だけど、隅々まで掃除してくれるのか、結局自分で掃除機を掛ける羽目になるんじゃないか•••
逡巡、頭の中で思考していた。
それを、店員は見逃さなかった。
すかさず話しかけてくる。
やはりプロというべきか。
商品のPRは素晴らしかった。
センサーで障害物を検知して自分で避ける、であったりとか、ロボットの整備や集めたゴミの処理も3ヶ月に1度でいい、だとか。
色々説明を受けた。
どれも聞けば聞くほど欲しくなっていったが、結局購入を決意したのは、値段だった。
かなりの値引きを目の前でしてくれた。
どっから出したのか、いつの間にか手に持っていた電卓をこれ見よがしに叩き、割り引いた値段を提示してくる。
割り引いた数字がでかければでかいほど、買わなければ失礼な気がしてくる。
気づけばレジへと足を運んでいた。
その時間、およそ5分だ。
恐れ入る。
やられた•••と思いはするけど、やっぱりウキウキが勝つ。
新生活初日に稼働して一緒のスタートを切るんだ!!
ぐらいにはウキウキしていた。
そして待ちに待った新生活初日。
家具も設置して荷解きもした。
足りない部分は追々整えるとして•••
お掃除ロボットの初稼働だ。
何々•••
最初に部屋を隈なく回って間取りを把握する•••
かしこすぎる。
そのためにセンサーが付いているのか。
家具を設置し終わった状態での初稼働は、予期していなかったが正解だったわけだ。
それでは•••念願の初稼働。
動き出した。淀みなく。
自分で方向を決め、自分で進んでいく。
まるで意思を持った動物のように、時には思いも寄らない挙動をしつつ、部屋の間取りを取っていく。
しばらく何をするでもなく、お掃除ロボットを眺めていた。
いくら見ていても飽きない。
こいつとこれから生活していくのか•••
思わず口角が上がってしまう。
掃除を終え、所定の位置に戻っていく。
モップ掛けをしてくれる機能も付いている最新型だ。
掃除後は床がしっとりと湿っているが、嫌な湿度ではなく、ウェットシートで拭き取った後のような清潔感を感じた。
ほうほう•••
どうやらスマフォのアプリを使って、掃除の時間や日時の指定ができるらしい•••
かしこすぎる•••
とりあえず毎日掃除してもらうか。間隔は少しずつ広げて様子を見ればいい。
時間は、朝の出勤前にした。
理由は単純に、掃除している姿を見たいからだ。
もうこの時点で愛着しか湧いていない。
この日からは、掃除しているロボットを愛でては、綺麗になった部屋を見て気持ちよく出勤する日々を送っていた。
新しい勤務先にも慣れてきた。
少しずつ胸の高鳴りも落ち着いてきた頃、あることに気がついた。
毎日愛でているお掃除ロボット•••
高性能のセンサーで家具や家電を把握して、隅々まで掃除してくれているのだが•••
一箇所だけ、何も無い空間なのに避けている•••
台所の前、自炊をするときによく行き来するから、物を置いているなんてことも無い。
それが1日だけの誤作動なら気にも止めないんだが•••
毎回避けている。
何も無いのに。
台所の前だけに油汚れが飛び散ることも考えられる。
一番掃除して欲しい箇所と言っても差し支えないけど•••
不思議に思ってその箇所を触ってみる。
姿勢を低くし、両手で撫でるように触れる。
しっとりしていた。
お掃除ロボットがモップを掛けた、というわけじゃない。
だってこの箇所だけ避けているわけだし。
だけど、何故かしっとりしていた。
他の床と比べると、少し冷たい気がする。
気のせいかとも思ったけど•••
こう毎日続くとその原因も気になってくる。
考えているうちに、ふと思い至る。
避けている箇所•••人の形をしてないか•••?
全身の毛穴が開いていく。
首筋から背中にかけて緩やかに悪寒を感じていた。
急に怖くなり身震いする。
まさか•••そんなこと•••
そうは思うけど•••今日もお掃除ロボットはこの箇所を避けて掃除している。
居ても立っても居られなくなった。
管理会社に問い合わせてみる。
明確な返答は返ってこなかった。
それでも今日もこの箇所は掃除されることはない。
休日に新居を契約した不動産に足を運ぶ事にした。
店員は暖かく迎えてくれたが、俺が話出すと表情が曇ったのが見てとれた。
そして、重い口を開いて教えてくれた。
俺の入居の2人前の入居者だったおじいさんが、台所前で脳梗塞で倒れて亡くなったとのことだった。
当初は事故物件として扱っていたけど、次の入居者以降へは告知義務が無いなんて意味のわからない決まりも説明された。
確かに、事故物件だったと知っていれば違う物件を選んでいただろうけど•••
話の内容と、お掃除ロボットの挙動はやはり関連性があったわけだ。
無理矢理納得しつつ、これからどうしようかと肩を落としながら家に帰る。
時間が経つと冷静に物事を考えることができた。
おじいさんも一人暮らしで大変だよな•••成仏してくれていたらいいのに•••
なんておじいさんに同情出来るほどに。
そして、今日もお掃除ロボットはこの箇所を避けて掃除をしている。
いや•••待てよ•••
違う•••
そうじゃない•••
まだ•••いる•••
まとめ

お掃除ロボットのセンサーに引っかかった物とは•••
ロボットが避ける中、床を触っていたということは•••
おじいさんは、まだいた
以上で、【事故物件の怪談】「まだいる」を紹介※眠れなくても責任取れませんを終わります。
他にも、【事故物件の怪談】「厳選5選‼︎」を紹介※眠れなくても責任取れませんという記事もあるので、興味がある方は是非ご一読ください。
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