あなたは怖い話は好きですか?
老若男女、一度は見たり聞いたりなど、怖い話に触れる機会はあるのではないでしょうか。
そんな中でも「詐欺の怖い話」は舞台としてはメジャーと言えるでしょう。
今回紹介する詐欺の怖い話は「ギャンブル詐欺」です。
夜中に読むのはおすすめしません。
何故なら、眠れなくなっても責任は取れませんから•••
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
他の怖い話も気になるという方は、下記の記事を参照ください。
【怖い話】詐欺の怖い話「ギャンブル詐欺」

憂いていたんだ。
これまでの人生を•••そしてこれからの人生も•••
平凡でよかった。平坦で、何も変哲も無い、そんな人生でよかった。
だけど、どうやらそうもいかないらしい。
過去を振り返っても、未来を望んでも•••目の前にあるのは現在で、改善したいと懇願するのはいつだって現実だ。
それはみんな同じじゃないのか?
何で、俺だけがこんなに苦しい思いをしなきゃいけないんだ•••
昔、よく言われていた言葉がある。
「ちゃんとしろよ」
何だよ、ちゃんとって。
どうやったらいいんだ。
何をすればいいんだ。
•••いつまでちゃんとしなきゃいけないんだ。
わかったよ•••
ちゃんとすればいいんだろ。
正解かどうかはわからない。
それでも、何かをしないといけないのだけはわかる。
だから•••
過去の過ちが現在を犯し、未来を蝕む、この現状を変えてやる。
そのために俺は•••
未来に賭けて、現在を得ることにした。
過去はもう振り返らない。
悩んでいたんだ。
どうしようもない程に。
今までお世話になることがなかった、消費者金融にまで縋るくらいに。
お金がなかった。
どうしてそんなにお金が必要なのかは、敢えて説明は控えるけど、結構な額が必要だったんだ。
日に何件も金融会社を行き来する•••何社も何社も•••
申請書やら契約書やらに必要事項を記入し疲れて、利き腕がだるくなってきたそんな時•••
あいつは声をかけてきた。
何社目だったろう。だけど、きっとすでに数を数えるのはやめていたと思う。
消費者金融から出てくる俺に、こう言うんだ。
「失礼ですが、今お時間よろしいでしょうか」
ブランド物に縁の無い俺でもわかった。
それくらい高級感漂う佇まいをしている。
靴は先が角張っていて、黒く鈍い光を放っている。傷一つ無く太陽光を反射していた。
足元からはスタイルの良さからか、股下までのシルエットがモデルのそれであり、足元だけで清潔感が滲み出ている。
右腕にはシルバーに輝く腕時計が嵌められており、視認できるだけでも内装に凝っているのが窺える。
カフスとネクタイピンはゴールドで揃えられており、見覚えのあるブランドのマークが拵えられていた。
極め付けは、胸元に飾られていたハンカチだ、きっとどこかのブランドの物だろうということは容易に想像できる。
カジュアルなように見えて、フォーマルに着こなしているそれらは、街中を跋扈するブランド物に包まれた若者のそれではなく、見た目だけでも自信や信念、信頼という言葉を想起した。
だけど、声をかけられた場所が場所なだけに、そのギャップに戸惑ってしまう。
疑ってかかっているのがわかったのだろう。
「大丈夫です、お時間は取らせません。よかったらお茶でも飲みながら•••お出ししますので」
笑った時に浮かぶ目尻の皺や、物腰の柔らかさから30代半ばだろうと推測する。
そんなに歳は変わらないはずなのに、ここまで装いが違うと変に萎縮してしまう。
俺なんかパーカーにジャージだぞ•••
「すぐそこに喫茶店があるので案内しますね」
予め場所を決めていたのか、スムーズに俺を案内する。
扉を開けると鈴が来客を知らせる、古風な佇まいの喫茶店だった。
入るや否や、スタスタと空いている席に俺を案内するその仕草は、スマートという他ない。
俺たちが席についたのを見計らい、やっと店員が登場する。
目の前の男は、食べ物の注文も促してはくるが、正直、着いてきたはいいものの、見知らぬ男と食事をするのは憚られたのでコーヒーだけ頼むことにした。
注文を終え、店員が厨房に入り姿が見えなくなった時、世間話も無しに本題を切り出してきた。
「宝くじに興味はありませんか?」
どうやら男は、消費者金融から出てくる俺を何度か見かけたらしく、お金に困ってると思い声をかけてきたらしい。
「当社では、宝くじの当選番号を事前に知ることができるんです。」
疑う余地しかない言葉を吐きながら、男は俺に名刺を差し出した。
会社名には、「幸福代理人」と何とも胡散臭いことが書かれていた。
「お金はとても尊い。何故なら、支払うべき対価がとても大きいから•••そうは思いませんか?」
抑揚を付けて話す男の言葉は、感情を読み取りやすくスマートに頭に流れ込んでくる。
「汗水垂らして働いて、得られる対価は次の支給日までの其の場凌ぎでしかない」
男の言葉に思わず頷いてしまう。宝くじという謳い文句への疑念がすでに霧散していた。
「私共の会社は、そんな多大な負担を負っている方達に、相応しい対価を分配できるよう設立されたのです」
男の演説に固唾を飲みながら聞き入ってしまう。
「負担に対して相応の対価があれば、不満は無くなり不安は生まれない」
頭の中では、確かに•••と頷いている自分がいた。
「不安が生まれなければ、不幸では無くなる。つまり、幸福、というわけです」
不幸•••そう思いながら生きてきた俺には刺さりすぎる言葉を投げかけられる。
「その幸福を届けるのが私の使命です。その具体的な方法が、宝くじなのです」
幸福を届ける•••宝くじ•••素直に入ってくる男の言葉に思考が奪われる。
「現金をお渡しする、もちろんそれでも構いませんが、それでは法を犯してしまう」
何が違法で、何が合法なのかはわからないが、この男が言うならそうなのだろう。
「先程もお話ししましたが、負担=対価です。それは逆も然り」
つまり•••
「法を•••罪を犯して対価を得たのであれば、それ相応の罰、つまり負担を支払わなければなりません」
それは今までの怠惰の結果、現状があるという現実を認識させられた気分にもなった。
「それは私共も望んでいませんから•••」
俺が机に置いて見つめている名刺を指差しこう締め括る。
「明日の新聞をお楽しみしてください。それでは、ご興味がありましたら連絡ください」
男はそう言い、席を立つ。そのままレジへ向かい退店していった。
いつの間にか伝票を手にしていたらしい。スマートだ。
名刺の裏には、数字の羅列が記されている。
幸福を•••届ける•••ね。
俺は喫茶店を後にした。
次の日、コンビニで新聞を購入する。
新聞自体読むのは初めてだった。
こんなに大きい必要はあるのか•••そう思いながら開いてみる。
しかし•••これどうやって読むんだ?
もう元のように綴じることができないのは明白となった新聞に対し少し同情する。
一枚一枚、目を通し粗を探すように目を通した。
あった。
そこには宝くじの当選番号と、当選結果が記されていた。
名刺と見比べる。
驚愕した。
名刺に書かれていたのは、歴とした大手新聞会社が手がけている、ちゃんとした情報誌に書かれていた物と一桁も相違なかったからだ。
それは一等の当選番号だった。
大きく「2億円」と書かれた一等の見出しに俺は息を呑んだ。
まさか•••
そう思った時にはすでにスマフォを手に取っていた。
数日後に男と会う約束をこじつけることができた。
今、直面している金銭事情についても、これで安心して取り組むことができる•••
そして当日、前と同じ喫茶店で、同じ席に、男は座っていた。
俺が近づいているのに気づくと、立ち上がり自然に握手を求めてくる。
まるで外交官が相手の手を取るように、俺の右手を両手で握り強く、大きく一度だけ振った。
「一等や二等、当選の番号に応じて供託金をいただいています」
着席すると同時に男は本題を切り出した。
「タダ、となると法的にも咎められますからね」
これも大事なことなのだろう。
「今まで皆様が支払ってきた負担に、安心してくだしさい。ほんの少し上乗せする程度です。」
それが負担に対しての対価という物なら、支払う他ないのだろう。
「どうされますか?」
俺は男の目を見つめながら頷く。
「わかりました。一等ですね。それでは、100万円用意ください」
大きな額にたじろいでしまったが、消費者金融を回るのももう慣れていた。
「大丈夫です。2億返ってきますから。もしかしたら、支払ってきた負担に比べると対価としては低いかもしれません」
そうは思わなかった。すでに頭の中には回っていない場所はなかったかと検索をかけていた。
「それでも、これから長い付き合いをしていくわけですから、焦らずゆっくりと返してもらいましょう」
長い付き合い、という言葉に少し胸が熱くなった。そうか、これがちゃんとした人付き合いなのかもしれない。
「私はあなたに幸せになってもらいたいんです」
心から言ってくれているであろう言葉に胸が震える。
その日はそのまま解散した。
いつの間にか伝票を手にしているマジシャンのような男に感心しつつも、俺は金策に走った。
後日、俺はお金を用意し男に供託金を支払う。
「それでは、これがあなたの幸せに必要な番号になります」
男は、名刺ほどの大きさの紙に、手書きで数字を書き連ねたものを俺に差し出す。
「数字で決まる人生とは数奇な物ですが、それもまた、あなたには必要なのです」
何ともおしゃれな言葉がスマートに出てくるものか。
男は毎度のことながら、いつの間にかレジに立っていることに店員が気づかないほどスマートに席を立っていた。
俺もようやく、この男のようにちゃんとした生活を送れるようになるのか•••そんなことを思いながら喫茶店を出て、宝くじ売り場にいく。
男がくれた数字を何度も確認しながら宝くじを購入した。
何か悪いことをしているような気分になったりはしたけど、きっとこれは合法だ、と心を落ち着ける。
次の日、コンビニで新聞を購入する。
不可逆的な構造のそれに、四苦八苦しつつも、見つける。
そして、宝くじの番号と、記載されている情報を見比べた。
何度も•••何度も•••
何度も•••何度も•••何度も•••何度も•••何度も•••何度も•••何度も•••
何度見比べても、数字は合わなかった。
一等どころか、続く二等や三等にも引っかからない。
むしろ、100円すら返ってこないハズレくじだった。
まさか•••
俺はスマフォを手に取り、男に連絡を試みる。
おかけになった電話番号は•••
おかしいだろ。
どうなってんだ。
何が起きてんだ。
誰か説明してくれ•••
幸福を届けてくれるんじゃなかったのかよ•••
不満や不安で心が満たされている。
負担は•••対価は•••
俺は•••
ちゃんとできてなかったのか。
まとめ

宝くじの抽選時間は決まっており、番号が確定してから新聞に載るまでにはラグがある
今回の詐欺はそのラグを利用した手法
他にも、雑誌、電話やメールなどに「バチスロ必勝法」などを謳っている詐欺もある
以上で、【怖い話】詐欺の怖い話「ギャンブル詐欺」を紹介※眠れなくても責任取れませんを終わります。
他にも、【怖い話】詐欺の怖い話「厳選5選!!」を紹介※眠れなくても責任取れませんという記事もあるので、興味がある方は是非ご一読ください。

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